PICCとは/輸液治療に用いる医療機器について
概説
医療機器の紹介
静脈内に抗がん剤を投与するための医療機器を簡単に紹介します。
<点滴の針>
薬液を静脈に注射する際に使用する柔らかいプラスチック製のカテーテル(短いチューブ)のことです。一般的に腕などの静脈に挿入されます。
詳しくは、点滴の針 末梢静脈留置針とはの記事をご覧ください。
<カテーテル>
中心静脈と呼ばれる、心臓に近い太い静脈に、カテーテルと呼ばれる管の先端がくるように入れて点滴をする方法です。
詳しくは、中心静脈カテーテルの記事をご覧ください。
<PICC(末梢静脈挿入型中心静脈カテーテル)>
腕から挿入する中心静脈カテーテルをPICC(ピック)と呼びます。心臓付近の静脈は腕の静脈に比べて太く、また血液の流れも多いので薬剤がすぐに薄まり、刺激性のある抗がん剤でも影響を受けにくい投与方法と言われています。
腕から簡単に挿入できるため安全性に優れ、感染を起こしにくいなどの特徴があります。
詳しくは、PICC(ピック)の記事をご覧ください。
<皮下埋め込み型中心静脈ポート(CVポート)>
皮下に埋め込んで使用される中心静脈カテーテルのことを皮下埋め込み型中心静脈ポート(以下CVポート)と呼びます。
CVポートは繰り返し薬剤の投与が必要な場合や、長期間にわたり薬剤投与を行わなければならない場合などに用いられます。
CVポートは100円硬貨程度の大きさの「ポート本体」に中心静脈カテーテルが接続されており、皮下に埋め込んで用いられます。
詳しくは、CVポートの記事をご覧ください。
点滴の針
点滴の針
<末梢静脈留置針(末梢静脈留置カテーテル)とは>
体内に挿入する管のことをカテーテルと言いますが、点滴や静脈注射を行うために、腕などの静脈に挿入するプラスチック製のカテーテルのことを末梢静脈留置針(末梢静脈留置カテーテル)といいます。
プラスチック製のカテーテルの中に金属針が入っており、静脈内に挿入できたら、カテーテルのみを残して金属針を抜きます。
点滴や注射をする時には、カテーテルにシリンジ(注射器)や輸液のためのチューブを接続して行います。
末梢静脈留置針は、感染や腫れ、痛みを伴う静脈の炎症などを引き起こす危険性があるため、3~4日毎に入れ替える必要があります。そのため、比較的短期間の輸液の投与に適しています。また、採血をすることは推奨されていないので、採血が必要な時には他の静脈に針を刺して行います。
<末梢静脈留置針の利点と欠点>
利点
- 短いカテーテルなので、比較的簡単に挿入できます。
- 一般的な中心静脈カテーテルと比較して、感染に対する処置が容易です。
欠点
- 3~4日毎に入れ替えが必要です
- 採血をすることは推奨されていません。
- 多くの抗癌剤のような刺激の強い薬剤を流すと、静脈炎を起こす場合があります。
- 長期にわたって点滴を続けると、血管が脆くなったり細くなったりします。
- 中心静脈カテーテルと比較して、血管外に薬剤が漏れ、薬剤によっては漏れた場合に重篤な皮膚障害を起こすリスクが高いと考えておくべきです。
中心静脈カテーテル
中心静脈カテーテルとは
カテーテルとは体内に挿入する管のことを言います。点滴や静脈注射を行うために、鎖骨や首、太ももの付け根にある血管から挿入し、カテーテルの先端が心臓近くの太い血管(中心静脈といいます)に位置させるカテーテルを中心静脈カテーテルと言います。
点滴や注射をする時には、カテーテルに注射器や輸液のためのチューブを接続して行います。また、このカテーテルを使用して、採血を行うこともできます。
<一般的な中心静脈カテーテル(非トンネル型中心静脈カテーテル)の利点と欠点>
利点
- 点滴のために針で血管を何度も刺されることがありません。
混ぜてはいけない複数の薬剤を使うのに適した、複数の薬液の通り道を有するタイプもあります。
欠点
- 挿入に伴う合併症がまれにあります。
- 末梢静脈カテーテルと比べて厳重な管理が必要です。
- 管理方法によっては感染のリスクが高くなることがあります。
※中心静脈カテーテルは、血流量の豊富な太い静脈血管に挿入するカテーテル全般を指しますが、入院される患者さんに、広く用いられている一般的なカテーテルについて説明しました。
ブロビアックカテーテル
ブロビアックカテーテルとは
ブロビアックカテーテルは、中心静脈カテーテルの一種で長期間体に針を刺すことなく、血液の中に直接薬剤を注入することができ、また、採血も行う事ができる細長いチューブ(カテーテル)です。
<ブロビアックカテーテルの特徴>
ブロビアックカテーテルは、柔らかいシリコーンゴムという素材でできており、途中にカフと呼ばれる合成繊維がついています。このカフが皮下組織と癒着(ゆちゃく:くっつく事)することにより、ひっぱりなどにより抜けてしまう危険性を低くします。また、皮膚の下にトンネルを作ってカテーテルを挿入するので、カテーテルが体の外にでている部分から血管に入るまでの距離が長く、細菌が血管内に侵入する危険性を低くし、感染を発症しにくくします。
<よくある質問>
シリンジやお薬を入れるためのチューブを、直接接続して使用します。
カテーテルは、挿入部位から細菌などが入らないように、透明なドレッシング材で保護します。ドレッシング材がはがれてきた場合には、新しいドレッシング材に変えてもらいます。
また、カテーテルが詰まらないように1日~1週間に1度、少量の生理食塩液で、カテーテル内を洗浄することが必要です。
ブロビアックカテーテルは、一般的名称「中心静脈カテーテル」のカフ付タイプに属しますが、医療現場において販売名が一般名称化しているので、その表記をしています。またトンネル型中心静脈カテーテル(CVカテーテル)とも呼ばれます。
PICC(ピック)
PICC(ピック)とは
PICC(ピック)は、腕から挿入する中心静脈カテーテルです。他の中心静脈カテーテルと比較して、腕から比較的簡単に挿入でき、挿入後の感染などのリスクも少ないのが特徴です。また管理方法によっては長期間にわたって使用できるカテーテルです。
利点
- 長期間治療が必要な場合でも、末梢静脈留置針のように定期的な入れ替えは基本的に必要ないので、何度も針で刺される苦痛がありません。
- 適切な管理を行なうと、長期間使用することができます。
- 腕から挿入するので、鎖骨や首の付近から挿入する際に発生しうる、肺や大きな血管を損傷するなど命にかかわるような合併症は起こりません。
- カテーテルの先端が太い静脈(中心静脈)に位置しているので、刺激の強い薬剤を使用しても、血管を痛めることがありません。
欠点
- 長いカテーテルが血管の中に入るので、静脈炎を起こすことがあります。
※温めるなどして様子を見ると解消される場合が多いようです。 - カテーテルが詰まって、使用できなくなることがあります。
※薬剤の投与や採血の後にしっかりとカテーテルの中を洗浄することにより、予防できます。 - カテーテルが体の外に出ているので、ひっかけないようにするなど管理に注意が必要です。
CVポート
CVポートとは?
CVポートは、中心静脈カテーテルの一種で、正式には皮下埋め込み型ポートといわれるものです。その名前のとおり、皮膚の下に埋め込んで薬剤を投与するために使用します。 CVポートは、100円硬貨程度の大きさの本体と薬剤を注入するチューブ(カテーテル)より構成されています。通常は、鎖骨の下の血管からカテーテルをいれ、右または左の胸の皮膚の下に埋め込みます。また状態によって腕に埋め込むこともあります。カテーテルの先端は、心臓近くの太い血管に留置されます。 体の中に埋め込みますので、外からはほとんど目立ちません。ただし、CVポートを体に埋め込みますので、小手術を必要とします。
CVポートには、セプタムと呼ばれる圧縮されたシリコーンゴムがあります。ここに専用の針を刺して薬剤を投与します。薬剤はこのCVポートとカテーテルを通って、血管内に投与されます。 CVポートは、体内に埋め込むために小さな手術を必要としますが、大きな利点があります。
利点
- CVポートでは大きなセプタム部分に簡単に刺すことができるので1回で確実に針を刺すことができます。
一方、従来、広く行われている末梢静脈留置針(腕の血管から抗がん剤の投与を行う)の場合、血管が細い、もしくは血管が脆い場合、針を何度も刺し直す場合があるので苦痛を伴うことがあります。 - 患者さんの体格にもよりますが、外見上、埋め込んだ部分はそれほど目立たず、生活にほとんど支障はありません。
- CVポートを留置している場合、両腕を自由に動かすことができるので、薬剤投与中に本を読むこともできます。一方、末梢静脈留置針(腕の血管から抗がん剤の投与を行う)の場合、腕を動かすことによって薬剤の漏れなどの危険性があるので、腕の動きが多少制限されます。カテーテルの先端は太い血管に留置しているので、薬剤を投与するとき刺激の強い薬剤を投与しても静脈炎が起こる可能性が少なくなります。
- 長時間かけて薬剤を投与する場合は、入院が必要なこともありますが、CVポートであれば体内に埋め込んでいるので、自宅で治療を行うことが可能となります。CVポートへの針の抜き刺しは、入院中および外来では医師や看護師が行いますが、自宅で治療を行う場合は患者さんご自身で行うことも可能です。
- きちんと管理をすれば感染率も低く、年余にわたって長期間使用することができます。
欠点
- 使用するには小さな外科的手術が必要です
- 合併症が起こる可能性があります。(挿入に伴うもの、埋め込み手術に関するもの、埋め込んだ後の合併症)
- 異物を体内に入れることに不安を感じる方がおられます。
CVポート(リザーバー)とは
CVポートは血管内にお薬を長期間注入する場合に用いられリザーバーと呼ばれることもあります。主に抗癌剤治療を実施する化学療法や長期間の高カロリー輸液の投与などに用いられます。 CVポートは直径2~3cmの小型円盤状のタンクとカテーテルと呼ばれるチューブから出来ています。ポートの中心にはセプタムと呼ばれる圧縮されたシリコーンゴムがあり、そこにヒューバー針もしくはフーバー針と呼ばれる専用の針を刺しお薬を流すことによってタンクを通って接続されているカテーテルへとお薬が流れる仕組みになっています。
CVポートは前胸部、上腕部、鼠径部(そけいぶ)など治療にもっとも適したところに埋め込まれます。
CVポートと接続されているカテーテル先端を上大静脈に留置し、ここからお薬が体に注入されます。
CVポート専用の針
CVポート専用の針(ヒューバー針/フーバー針)
<CVポートからの薬液投与の実際>
CVポートを用いて薬液の投与を行う際には、専用の針が必要です。 ポート専用の針はヒューバー針もしくはフーバー針と呼ばれています。 当サイトでは、ヒューバー針と称します。
ポート本体の上部にある「セプタム」と呼ばれるシリコーンゴムの部分にヒューバー針を刺します。薬剤がポート本体につながっているカテーテルの先端から流れる仕組みになっています。
ポート本体が埋め込まれている場所を皮膚の上から確かめ、皮膚の上からセプタムに刺します。
ポート本体は、皮膚の上から指で触ることにより、どこに埋められているかを容易に探し出す事ができます。
ヒューバー針は、CVポートをより長く使用できる様に、針の先端(薬剤注入口)が側面にくるように少し折れ曲がった構造をしています。
セプタムは、圧縮されたシリコーンゴムでできており非常に丈夫に作られていますが、ヒューバー針以外の一般的な注射針を用いると刺した部分のシリコーンゴムが針先でくりぬかれてしまい、ポートの使用期間を短くしてしまう可能性があります(最悪の場合はCVポートの入れ替えが必要になります)。
そのため、CVポートを通じて薬液の投与を行う際には必ずヒューバー針を用いる事が重要です。
<安全機能付ヒューバー針>
最近では、ヒューバー針を抜く際に誤って自分の手を刺してしまわない様に工夫されたヒューバー針もあります。(セーフティタイプと呼ばれます。)
<安全機能付タイプを使って、針を抜く方法(機能の一例)>